BACK NUMBER

バックナンバー一覧に戻る

2001.4.7
今日の体重 71.8kg
written by kama

【System】
 突然だが、今日はシリアスモードで行きたいと思う。
 わたくしの仕事は、ご存知の方はご存知だと思うが、ナマモノを作る仕事である。ナマモノなので、賞味期限がある。一昔前は賞味期限は短くても数年あったが、最近のはおおよそ3ヶ月。売り出してから3ヶ月たつと、もう腐って(陳腐になってしまって)売り物にならなくなる。なので、それを作る側というのは、通常の同類を作ることからすれば考えられないくらいものすごい製作体制を敷くことになる。なにしろ発売時期が1日ずれるだけでかなりの金が飛ぶのである。「そのくらいオレ様がホテンしてやるぜ!今月は無駄使いしなかったしな!!!」とか景気よく言えればいいのだが、その飛ぶ金が何億にもなる、というからなかなかそう景気よくもなれない(というか生涯収入でもむり)。

 そこで製造者の使命としては「とにもかくにも期限を守る」ということになる。ところが、つくってるものがこれがまた「ナマモノ」のよせあつめなので、「そんなばかなー!!」と犬吠埼の灯台から沈む夕日に向かって叫びたくなるくらい不可思議なことが連発する。「オレこんなの知らん」「時間がない」「でもなんとかしなきゃならん」「時間がない」「帰る時間遅くなる」「時間がない」「ていうか休みもなくなる」「時間がない」「ていうか睡眠時間もなくなる」「時間がない」「ていうかプライベートむちゃくちゃになる」「時間がない」「"ぷいっ"などという簡潔なメールが届く」とかいうことになるのである。

 しかしとにもかくにも「System」というのは、ものすごく複雑なものから構成されており、ほんのわずかな不整合でも結果は致命的なものになる。プログラムのコードを1文字間違えただけで電源すら入らなくなるのは当然のこと、このデバイスとこのデバイスとこのデバイスが組み合わさってこの条件の5ms (5/1000秒)だけまずいタイミングがあって「ひでぶ」的な可能性がある、とか、とか。

 つくづく、「細い鉛筆を何本も立てに立てた上にたってるやじろべえだな」と思う今日この頃。

【System2】
 しかし「複雑なやじろべえSystem」というのは某ナマモノに限ったことではなく、「社会」というものもまたしかり、なのではないかなと思う今日この頃。たとえばわたくしはただいま朝おきて東京から越生に向かっている途中の東上線の車内、という何気ない週末の朝を送っているわけであるが、たとえばここにくるまでに、さまざまな監視、個人情報の流出があるわけである。
  • 朝起きてとりあえずasahi.comのホームページなど見る。
    →cookieでどんな記事を、何時何分に見たかというのが記録される。
  • PHSをもって家を出る。
    →PHSの位置情報により何時にどこにいたかというのが逐一記録。るーしーさん事件でも一躍有名になりましたね、携帯の位置情報記録。
  • 銀行に行って金をおろす。
    →何時何分に、どんなツラして下ろしたか顔写真まで記録。
  • 電車に乗る。
    →自動改札で何時何分に何駅から何駅まで移動したか記録。
 などなど、IT化の進んだ現代では、普段それと意識せずに、ものすごい量の個人行動情報が監視/記録されてしまっているのである。そして、何かふとその「しくみ」から外れると、某ナマモノと同じく結果は致命的な結果を招くこととなる。たとえばクレジットカードで銀行引き落としが数ヶ月滞るとクレジットカードの使用停止、ならびにブラックリスト掲載により他社クレジットカードも使用不能に、とするとインターネットショッピングがほぼ使用不能に、などなどということになっていくわけである。ましてや、何かの犯罪を犯して逃亡者の身となった場合には上記のようなさまざまな監視システムの目にさらされることになるわけである。今でこそ人並みにサラリーマンなどという身分でのうのうと快適にIT化の恩恵にあずかって暮らしているわけであるが、いつ何かの拍子に警察から追われる身になり、買い物もろくにできず、移動するにもいちいち監視の目を気にしなければならない危険もある、というのが今のIT化社会の両側面なのである。

 うーむ、と思いつつ、ADSLも当分先、自動改札化もされておらずPHSも圏外な越生の自宅に帰る途中のわたくしであった。

Copyright (C)2001,2002 Kamadouma All-Rights Reserved.
Requirements browser: Netscape 4.0 or later

kamadouma@orijin.com

powered by